昨日、お知らせをしたAUBETTの新シーズン。

 

お伝えしておりましたように、明日、23日(日)は終日、AUBETTのデザイナー、杉原さんが在店してくれます。

 

約一年振りくらいですね。

 

杉原さんが店頭に立ってくれるのは。

 

通常だとこういった店頭にデザイナーが立ってくれる場合は、大体土曜日にしていたのですが、今回は、たまには日曜日も良いかなって思って、日曜日でお願いをしてみましたので、ご都合の合う方がいたら良いですね。

 

これまでこのブログでも書いたことがあるのですが、洋服づくりのキャリアがしっかりとあるデザイナーですからね。

杉原さん。

 

僕も杉原さんがつくる洋服を通じて、服づくりというものをとても勉強することができたし、洋服の考え方というのも変わったんですよ。

 

杉原さんは、何年も何年も洋服づくりをやってきたし、それに自分の人生を捧げてるって言ってた。

 

そういう人が本気で向き合ってつくる洋服は、とても良いものですよ。

 

今は”名ばかりデザイナー”がとても多く思うし、専門学校を卒業したらすぐに誰でもが”デザイナー”と称して、服をつくることができてしまう時代。

 

ただ、でも、世に氾濫する程の服でも、そこには必ず、”そのレベル”というもの、”その濃度”というものが存在するんですよ。

 

そして、それは洋服に現れる。絶対に。

 

更には、新品の状態だけではなく、いざ洋服そのものを着て過ごした時に、半年、一年と時間を経ると、その洋服が持つレベルの差は、どんどんどんどん開いてくる。

 

新品からの”その先”っていうのが、明るい洋服は、そう多くは存在しないから。

 

外的にも内的側面にも。

 

当店では、やはりそういうことは、とても大事にして取り扱う洋服を選んでいるワケですが、杉原さんがつくるものは、まさに杉原さん。

 

時間をかけて培ってきたオリジナリティと、パーソナリティが超濃厚に反映され、洋服として形になってるのがすごく感じられるの。

 

そういう洋服です。

 

 

だから、新シーズンを迎えるにあたり、一日限りだけど、杉原さんのつくった洋服を並べながら、杉原さんに店に立ってもらおうというワケです。

 

あとは、実際に杉原さんが洋服をつくってる時に使った”パターン”も店頭に用意して、見てもらえるようにしようと思ってます。

 

“立体裁断”のパターンが最も得意なデザイナーだから。

 

すごく特徴的。

 

自分でコートやシャツ、パンツ、カットソーに至るまで、全ての洋服を”立体裁断”で設計する杉原さん。

 

外部パタンナーのブランドじゃないの。

 

だから、洋服の匂いがとても”杉原さん”してる。

 

 

 

今日は、明日から発売する一部のものを紹介しますね。

 

 

 

 

 

 

AUBETT

YAK MELTON OVERCOAT

material _ YAK 100%

color _ BROWN

size _ 3,4,5

 

まず、これ。

“紡毛ヤク”を100%使い、二重織り組織のダブルフェイス、つまり、表面も裏面もどちらも”表”。

それが、目の詰まった超ヘビーメルトン生地のコート。

防寒バツグン。

通常だと、そのヤク繊維の原料プライスから、分量を抑えて軽く仕上げられることが中心。

だけど、杉原さんは、それを無視。

 

今回は、振り切った超重量のヤク。

 

杉原さん設計の立体サイジングで、生地の密度、使用量はかなりのものがあるけど、”リバー縫製”という仕様で、分量から考えると、嘘だろ。って思うくらいのエアリーな着用感。

 

世界的なブランドでも、リバー縫製の場合、メルトンの生地重量が300g/mや400g/mなのに対して、AUBETTの今回のは、760g/mもの超重量。

 

それくらい通常は、ライトに仕上げられるけど、このリバー縫製の賜物を最大に感じてもらうために、それだけの重量のヘビーメルトンを使ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、縫製されてる生地の端。

 

リバー縫製というのは、、、

 

“二重織り”という生地は、二枚の生地が、織機内で同時に織り上げられながら、それが一枚となるように糸が通されて、二重だけど、一枚の生地ができてるって思ってもらえたら良いと思う。

 

その二重織りの生地の、端っこを手で割く。

 

そして、端の部分だけ、一枚の生地を二枚にし、その生地端を、内側に折り込んで、手で縫う。

 

そういう縫製技法。

 

 

 

 

 

今回は、ふんわりとした”紡毛のヤク”を大きな分量とってるコートだから、そのボリュームに合わせて、1cmの幅で生地端を折り返し、リバー縫製。

 

もちろん、生地の端を全部を手で割くし、総手縫いになるから、手間はかかるんだけど、着用者にはいくつもの大きな恩恵がある。

 

最大の特徴が、他の縫製仕様と比較して、”超軽量に仕上がる”ということ。

 

特に、今回は、”ヘビーヤクメルトン”。

 

この分量で、この着用感は、この組み合わせだけ。

 

レディースのコートでは、時折目にする手法ではありますが、単純にその軽さを追求されることだけが多い。

 

でも、杉原さんは、ここまで重量のある生地を使い、通常のミシン縫製の場合なら、むちゃくちゃに重く出来上がってしまい、着ることが億劫になってしまう程のヘビーメルトンのコートを、リバー縫製なら形にできるだろうと考えてトライしたもの。

 

まあ、リバー縫製で縫われた洋服が軽量な理由は、見返しパーツや、向こう布パーツ、シームを隠すための仕様や、裏地が不必要など、いろんなことがあるけど、お客様方は、これでしか感じられないものを余すとこなく感じてください。

 

そして、今はこういうリバー縫製って日本国内では、効率や技術の問題で、なかなか実現できる工場が存在しないみたいだけど、数少ない国内リバー。

 

今回のこのコートも”縫製の工程”だけで、一着あたり2日半の時間がかかるそうですからね。

一着縫うだけで、この時間のかかり方は、ハンパないですよ。

 

奈良県の工場って杉原さん言ってたかな。確か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、このコートは、リバー縫製はそうなんだけど、杉原さんのいろんな技術が詰まってる。

 

立体裁断を活かしたオーバーなサイズ設計なんだけど、サイズ展開は、3・4・5の3サイズでの展開。

 

通常、このようなサイズ展開の場合は、マスターパターンと言って、3つの内のどれか1つが基準になる。

 

それをベースに、”グレーディング”という、寸法調整(縮小or拡大)を行なって、サイズ展開としてつくるものなんですよ。

 

ただ、今回のコートは杉原さんならでは。

 

“グレーディングではない”サイズ展開。

 

体格によって選ぶサイズが変わる。

 

のではなく、全てのサイズが別々に成り立つウルトラ設計。

 

 

 

 

 

 

そして、この超重量生地や縫製仕様が組み合わせられることによって、杉原さんがサンローラン時代から、今まで10年以上に渡って、追究してきた”立体的なオーバーサイズ”が見事に実現されてる。

 

サンローランに在籍していた時から、アトリエの隅っこで、何度も何度も何度も何度も、解いてはつくり、解いてはつくり、を繰り返して10年以上突き詰めていた形。

 

これが杉原さんが目指す理想の姿。

 

肩は大きくドロップしてるけど、どんな体型の方が着ても、設計したドレープが必ず生まれるようにしてる。

 

それが、”立体のオーバーサイズ”。

 

身幅も大きな分量だけど、身頃にダーツを入れ、体から離れた位置に存在するダーツが、造形を生み出し、フロントで見事な”面”をつくってくれる。

 

それが大きいサイズ感だけど、”立体”ということにつながる。

 

 

 

 

 

それが袖にも。

杉原さんが常に目指すのが、”生えた袖”という考え方。

 

人間の体は、胴体があって、腕や足があるけど、それって”パーツ”ではない。

切れ目なく、一体じゃないですか。

 

だから、そういう人間が着る洋服も、パーツの集合体ではなく、全てが一体であるということをとても大事にしてるんですよ。

 

腕を上げると身頃脇にドレープが生まれ、下ろすと袖と身頃が一続きのドレープが出る。

 

腕が身頃の内側から”生える”ように出てきて、全てがつながる洋服。

 

それが、いつの時代に着ても美しく、スタイルが良く見え、着用者に似合った洋服になってくれるんですよ。

 

これこそ、立体裁断の最大の魅力だけど、それを柔らかく、最も自然に実現できるのが、”リバー縫製”だそう。

 

生地、パターン、縫製。

 

この3つが途轍もなくレベルの高い位置で合致した冬場のコートです。

 

 

 

 

 

紡毛のヤクということもあり、袖の内側だけに滑りを良くするためのライニング付き。

 

袖を捲って着ることが考えられてるコートなので、ライニングは袖を折り返した際に、見えない位置までの長さです。

 

 

 

 

ただし、これも手縫い。

 

この原料で、この重量で、この仕様で、この設計で、このプライスは悪くないと思いますよ。

 

無染色のヤクの繊維のポテンシャルも存分に感じられるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

AUBETT

OVERSIZE H/N PULLOVER

material _ CASHMERE 95%,POLYURETHANE 5%

color _ NATURAL

size _ 3,4,5

 

ブランドとして、初めてトライした”カシミヤセーター”。

 

これも、ヤバいから。

 

写真では、ハイネックの無染色カラーだけど、展開としては、ブラックもある。

あと、クルーネックタイプで無染色と、ブラック。

 

 

 

 

 

 

杉原さん自身、セーターが好きで、長年大切に着ているものがあるそうですが、やはり、その特性上、弱くなってきてダレてしまったり、毛玉ができ、それを除去する度に生地が痩せていってしまうのを残念に思ってた。

 

そして、ニットをつくるなら、やはりカシミヤ。

 

ただ、杉原さんが納得できるカシミヤだと、どうしても天文学的なプライスになっていってしまうことがこれまでだったそうです。

 

それが、とても良い出会いがあり、ハイレベルなカシミヤのクオリティを保ったまま、大幅に、大幅に、大きく中間コストを削減することができたそうです。

 

でもでも、世の中には高品質なカシミヤのニットは、たくさん存在する。

 

杉原さんが新たにカシミヤのニットを生み出す意味を考えた時に、絶対にどこにも存在せず、着続けられるものを追究した。

 

それが今回のカシミヤの編み地。

 

 

 

 

 

 

超絶的な目の詰まりのカシミヤニット。

 

まず、15番手単子という、通常よりも、かなり太く設計したカシミヤ糸を3本撚りで、機械編みでできる限界まで目を詰めて編んでいく。

 

ただ、それだけでは、”見たことのあるヘビーなカシミヤセーター”になってしまう。

 

だから、そこに、AUBETTオリジナルの”横方向にだけポリウレタンの糸”を入れることを開発。

 

それにより、機械では限界値の目の詰まりを、、、

 

更に、”倍”詰めることができたそう。

 

機械の限界を超えた、目の詰まり。

 

しかも、どうしても劣化してしまう性質のあるポリウレタンだけど、それが劣化しないようにポリウレタンの糸を2本入れ、

 

表からも、

 

裏からも、

 

肌にも当たらない、

 

“見えない場所”に配置してる。

 

機械の限界まで編まれた編み地を、更に、物性としてこれ以上詰まらなくなるまでゴムの力で詰める。

 

着用により、肘が抜けてしまったり、伸びてしまうニットの特性も、これで解決させることができたという超優秀な編み地なの。

 

あとは、まあ一着で1kgのカシミヤの重量だけど、ポリウレタンのおかげでハリが生まれ、そうとは思えない軽さにもなってる。

 

これもね、かなりヤバいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、形は、やはり”立体裁断”。

 

ニットはどうしても、編み地の”目”で形成されるという、生産の都合上、直線的なパターンとなってしまい、洋服のアウトラインに制約が出てしまうのがフツー。

 

しかし、それを逆手に取り、オリジナルの形状を実現してる。

 

セーターでこのフォルムはお目にかかれないと思いますよ。

 

 

 

 

 

 

横から見ても、既にアームの見事な三角形が潜んでる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原料が原料だから、当たり前にむちゃくちゃな肌当たりだし、着ていて心地良いけど、これがダレてしまわず、このアウトラインで形成されてるものは、存在しないと思いますよ。

 

圧巻。

 

 

 

 

 

 

 

 

AUBETT

LATINE DENIM WIDE 7 POCKET PANTS

material _ COTTON 100%

color _ INDIGO

size _ 3,4,5

 

そして、これ。

AUBETTのデニム。

デニムだけど、岡山じゃないですね。

あと、インディゴ染めでもない。

 

当店では、とても馴染みのある愛知県の”山栄毛織”さんで織られた”ラチネデニム”です。

 

山栄毛織さんは、毛織物を得意とする機屋さんですね。

 

先日紹介したtilt The authenticsも全て山栄毛織さんでのオリジナル生地だった。

 

デニムのような見え方だけど、色落ちせず、生地密度も高いもの、そして、毛織物のような美しさがあるデニムをつくることを目指して考えられた生地です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真でも生地のきめ細かさが伝わるんじゃないかな。

ラチネの組織。

 

 

 

 

 

セルヴィッチデニムのように、アウトシーム側には生地ミミが付属。

 

ただ、毛織物の山栄毛織さんでつくられた生地なので、通常のデニムのようなセルヴィッチではありません。

 

スーツの生地端で用いられる”ミミネーム”というものがあり、ドビー織りの技術を使った生地ミミ仕様です。

 

 

ただ、、

 

生地というのは、平面で一直線なものです。

つまりは、それに伴い”生地ミミ”もストレート。

 

AUBETTは、全ての洋服が立体裁断。

 

一般的に存在するジーパンも、かなり平面的なものが多い。

 

特に、一直線な生地ミミをアウトサイドシームにそのまま使用した場合は、アウトラインの出方にかなり制約が生まれてしまう。

片側は、必ず真っ直ぐになってしまうから。

 

 

しかし、それを杉原さんの設計で全く別のものへと変貌させてる。

 

 

 

 

 

 

この内股に入るダーツ。

ここがかなりのキーポイント。

 

アウトサイドシームは、真っ直ぐ一直線という、昔ながらのジーパンのディテールはそのままに、内股に施したダーツで、形を”起き上がらせ”、立体の形を実現してる。

 

このパンツ、かなり男前な形してるから。

 

 

 

 

 

そして、バックヨーク。

ここも、フツーとは違うパターンしてる。

腰やお尻にフィットする形状でありながら、サイドビューは劇的にストレート。

一般的なジーパンを穿く感覚で穿いてもらったら、いろんなところに感動してもらえると思いますよ。

 

あと、バックヨークと身頃の切り替えを利用したポケットも配置。

 

これにより”7ポケット”という仕様。

 

 

 

 

 

 

 

 

AUBETT

JACQUARD BLANKET

material _WOOL 100%

color _ CREAM

size _ ONE

 

こちら。

彫刻家として活動する、瀬戸優さんとAUBETTとのコラボレーションで生まれたブランケット。

 

瀬戸優さんがイーグル柄の作品を描き、それをそのままブランケットにジャガードとして乗せたもの。

 

瀬戸優さんが描く、自分たちと同時刻に別の場所で生きる”リアル”なイーグル作品の色彩をSUPER 140Sの原料で、8色の先染めを行い、ブランケットにしたピースです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8色の先染めウールジャガードで、作品そのものを描く複雑なカラーコントラスト。

 

 

 

 

グラウンドは、ヘビーインレイだそうです。ウール100の。

繰り返し繰り返し、縮絨を施して、目の詰まりや重厚感を出してるブランケットです。

 

これまでは、ブランドとして洋服だけの展開でしたが、今回からはこのようなものも展開します。

 

 

明日は、むちゃくちゃたくさんの数量やバリエーションがあるわけではないですが、今日紹介したもの以外にもいろんなものを見てもらえると思います。

 

 

明日23日(日)は、杉原さんと一緒にお待ちしてますね。