Private (Public) Collectionとして、カネタ織物、AUBETT、そして当店CASANOVA&COで生み出した3種類の洋服。

 

日頃より取り扱いを行い、このような洋服づくりの架け橋をしてくれたAUBETT。

そのブランドのディレクター吉村さんと、デザイナー杉原さん、そして僕とでインタビュー形式での対談を行いました。

 

今ではこういうのはインスタライブとかでやるんだろうと思いますし、それを音声でお伝えするのも良いのですが、もっと目に見えた形として残り続け、そして自分がとても大切にしてきた”文字”としてその全てをお伝えしたいと思います。

 

これまでこのようなことは、ちょうど一年前に山内の山内さんとで行ったことがありますが、それに続き二回目。

超長文となりますが、ご覧頂けると幸いです。

 

 

 

以下より三者での対談です。

 

——————-

 

<福田>:それでは、吉村さん、杉原さん宜しくお願いします。

 

<吉村・杉原>:宜しくお願いします。

 

<福田>:早速ですが、このインタビューはこれまでブログで色々書いて、それを掲載してる前提でいくのですが、そもそもAUBETTの考える”ドレープ”っていうのを教えてください。

これ、僕ほんと感動したんで。

だって今までは、あの〜、ドレープって、例えばワイドパンツで、大きくつくって分量があるから裾が揺れるとか、コートとか着丈の長いものが重力で揺れるとか、そういうものをドレープって思ってたんですよ。

それを杉原さんから聞いたら全然違ったわけじゃないですか。

 

<杉原>:一般的には、”ドレープ”というのは、「布を垂らした時に生まれるひだ」として使われるのが普通ですよね。

国内では特にそうだと思いますね。

渡仏して驚いたのは、日本で学んできたドレープの概念とは全く異なった技法を目の当たりにしたことです。

特に、僕が働いていたヨーロッパのメゾンではドレープの意味合いが全く違って、それが技術として根付いている姿に感銘を受けたんです。

日本で唯一、ニュアンスが近い話しをしていたのが、僕が文化(文化服装学院)の時に、何か情熱大陸のような特集だったと思うのですが、そこで、ヨウジさん(山本耀司さん)が、アウグスト・ザンダーの「20世紀の人間たち」っていう写真集があリ、その中でシャツを着てる人の写真を一枚持って見せて話をしてて、「この男の人が着てるシャツのドレープで、それだけで24時間服づくりを妄想できる」みたいなこと言ってたんですよ。

 

<福田>:ヨウジさんが?

 

<杉原>:ヨウジさんが。で、なんか僕それ聞いた時に、その被写体になっていた働く男性から醸し出る香りが服に投影されていることや、サイズ感のことを言っているのか、パターンとかカッティングのことを言いたいんだろうな。ぐらいに思ってたんですよ。

でも、それがヨーロッパに渡って、自分なりに答えが分かったんですけど、要はその”パターン”の傾斜。

例えば、肩だったら、首元からどのくらいの角度で下がってるのか。

で、その傾斜を立体でつくる時に、目で見て立体にするわけじゃないですか。

 

<福田>:はいはい。

 

<杉原>:そこでドレープを落としていくんですけど、日本の服づくりに”原型”っていうものがあって、それが基本なんですよね。

これまで様々な会社で働いてみて、日本の服づくりにはまずDNA的に”原型”っていうものが教育的にも根付いていると感じました。

そうすると、大体もう肩の傾斜ってほぼほぼ決まってくるんですよね。

もちろん、そこからドメスティックブランドとかで、ちゃんとパターンからつくってるブランドは、自分たちで傾斜も決めて、ものを目で見て、決めてるとは思うんですけど、そこまで”傾斜に対してどういうドレープが生まれるか”って服づくりは、あんまり実は浸透してなくて。

 

<福田>:ほうほう。

 

<杉原>:それが、ヨーロッパだと”イース”っていう技術があるんですよ。

 

<福田>:”イース”?

 

<杉原>:”イース”。平面的なパターンだと、重力に対して、真っ直ぐ落ちるドレープなんですよ。

でも、”イース”っていうのは、そうじゃなくて、肩からの膨らみのシワを脇腹くらいの位置に目掛けて落とすイースとか、はたまた脇の縫い目をイースの膨らみの奥に隠すために、何センチのドレープを生ませるとか。

 

<福田>:あ〜なるほど。脇のシームを見えないようにするために。

 

<杉原>:そうです。それって、肩傾斜だけじゃ話が終わらなくて、目指すドレープ(イース)をつなぎとめるために、脇線をどの角度でどうやってくっつけていくとか、アームホールがどの方向にどう向いてるのか、とか。全部ミリ単位の合体した完成系が”服”なんですよ。

でも、そこまで立体物として意識してると感じられる服って全然見かけたことがなくて。

唯一、それをやってるのが僕が知ってる限りだと”ステファノ・ピラーティ”なんですよ。

 

<福田>:へぇ〜、そうなんですか。

 

<杉原>:それってもともと、レディースの技術なんです。レディースが、胸を綺麗に見せるためにとか、崩れた体型をエレガントに見せるために、イースの造形で全部のパーツをつなぎ留めていくってことをやってたんですよ。

そうするとその服を着る人の体型に左右されることなく、構築的で立体的な服ができるんですよ。

それが僕が思う、技術面で表現するラグジュアリーなんですよね。

もちろん、ラグジュアリーという言葉は思想も強く宿っていて、それだけではないんですが。

 

<福田>:ほ〜なるほど。

 

<杉原>:そういう立体的な造形で作られた服って多分、”手放したくない服”になるんですよ。

いつ着ても、鏡の前に立つと、格好良いんですよ、自分が。綺麗に見える。

 

<福田>:そうなんですね。

 

<杉原>:でも、それをやるためには今度はイースを出す、”素材”が必須になってくる。

 

<福田>:あ〜、そういうことですか。

 

<杉原>:そうなんですよ。素材とカッティングが噛み合ってないと成立しないですし、デザインと同じで、何も考えないでただイージーにつくられた素材でそれをやっても服に魅力が宿りません。

素材とドレープを生むパターンがマリアージュした時に、初めて、僕らでいう、”手放したくない服”になってくるんですよね。

で、僕たちはクローゼット全てをそれにしたいんだよね?

 

<吉村>:笑

 

<杉原>:それを目指してるんで、全てそういう意識でつくってて。

今回のジャケットも、コートも、パンツも全部そう目指してつくってる。

それを、具体的に言うと、

 

 

 

<杉原>:このコート。

この肩先から2本ドレープが入ってるじゃないですか。

これがイースです。

重力に倣ってそのまま真っ直ぐ落とすんじゃなくて、袖側は肘の内側に向かって、身頃側は脇腹に向かって肩からドレープが出て、それを脇で消してる。

 

<福田>:そうですね。

V字っていうのが良いんですかね。そういう二本の膨らみにも見えますね。

袖と身頃、それぞれの肩の部分の二箇所から、それぞれが交差していって消えてるっていうか、向かい合っていくようにドレープが出てる。

 

<杉原>:そうです。

身頃のイースは、肩から脇に向かって膨らんだドレープを入れつつ、脇の縫い目が見えないようにしてるし、胸のあたりが面になるようにしてるんですよ。

もちろん、これはそれぞれ一本ずつですけど、それを二本も三本も出すこともできる。それをピラーティがよくやるんですよ。

 

<福田>:三本も?

 

<杉原>:そうです。三本出して、それを消す。

でも、その傾斜からのイース(膨らみあるドレープ)が、”立体的”ということの真理で、それの集合体としての服はとても美しいんです。

 

<福田>:はい。はい。はい。そうなんですね。

 

<杉原>:ただ、それは素材が必須で、素材と立体が組み合わさった時に威力を発揮するんですよ。

 

<福田>:なるほど。

 

<杉原>:そうなんですよ。

少し言葉で説明するのは難しいんですけど、だから僕はAUBETTの服は「着てください。」って伝えてます。

着ると、その立体っていうのが少しでも分かってもらえると思います。

 

<福田>:それが日本の原型を使った服だとなかなかないと。

 

<杉原>:そうですね。なかなか見つけられないと思います。

 

<福田>:杉原さんは、原型は使ってないんですもんね。

“立体裁断”って言ってましたもんね。それで、イースを出してる。

 

<杉原>:そうです。”立体裁断”って言葉も今はわぁ〜と巷にたくさんあるんですけど、、

普通は、単純に平面だと想像しづらいところを、目で見ながら、自分でボディに着せて、布をあててハサミで切ってつくるということなんですけど、、

実は、その奥に何個も扉があって。

 

<福田>:はい。

 

<杉原>:彫刻と一緒なんですよね。

360度見て、美しく見えるドレープを縫い目でつないでいくっていう作業なんですけど、何て言えば良いのかな。

 

<福田>:はっはっは。

えっ、じゃあ具体的に”立体裁断”ってどういう作業してるんですか?

 

<杉原>:立体裁断は、トルソーに布を当てて、支点をハサミで切り込んでいって、トップスだったら肩なんですけど、そこを支点にして、そこで切ると布が落ちるんで、そこからじゃあどうつないでいくか。

 

<福田>:肩に切れ込みを入れるということですか?

 

<吉村>:布を当てて切れ込みを入れるっていう作業。

 

<杉原>:そうですそうです。支点にピンを留めて、そこにハサミを入れて、そこからどんどんどんどん切っていくんですけど。

 

<福田>:あ〜はあ、はあ、はあ。

 

<杉原>:で最終的には、アームホールとか、袖をつけるとことか。全部が支点になってくるんですけど。スタートは僕の場合は肩ですね。ほとんど。

 

<福田>:よくわかんないけど、そうなんですね。

 

<杉原>:最初にどこか顔を決めて、そっからじゃあ、アームホールどうしようかなとか。

 

<福田>:肩スタート?

 

<杉原>:僕の場合は、肩から始めることが多いですね。重力との戦いなので。

そうやっていくことで、立体の服ってできてくるんですよ。

 

<福田>:確かにAUBETTって肩がすごく特徴的ですもんね。

 

<杉原>:肩が好きなんですよ。

 

<福田>:でもそうですよね。

僕もトップス系のものは肩が一番っていうか、かなり重要なポイントだと思いますもんね。

 

<杉原>:結構、平面的なパターンの服って着る人の体型にめちゃめちゃ左右される。

すごいイカリ肩の人が着るとそのままそのイカってるドレープが出てしまうか、もしくはドレープが消えちゃったりもするんで。

僕は、平面的につくらない理由は、万人にハマるというのは難しいと思うんですけど、ある程度カバーできる分量だったり、オーバーサイズなんですけど、ダボっとさせたくてやってるわけじゃない。分量を入れたいだけっていう。

 

<福田>:うんうん。

 

<吉村>:ボリュームはあるけど、フィットするところにはちゃんとフィットする。意図した空間があってやってることですね。

 

<杉原>:彫刻に近いんですけどね。立体感を出すための”シワ”がドレープ。

まあ、シワじゃないですね。

衣服内に空間を作る。

それがブランド名になってるんですよ。

 

<吉村>:AUBETTっていうのは、身体と衣服の間に生まれる空間を、自分だけのプライベートな部屋と考えた、”小さい部屋”っていうことなんです。

 

<杉原>:”小さい部屋”って意味なんで、それを身体との間につくっていくこと。

それが一言で言えばAUBETTの考えるドレープですね。

 

<吉村>:結局、服って、ドレープとか、いろんな細かい技術の積み重ねで一着ができてるっていうことなんですよね。

太田さん(カネタ織物の太田さん)がつくる素材がAUBETTには欠かせない存在のように。

いつもはこういう場ではあまり言わないようにしてます。

あんまり言い過ぎて、変に説明くさくなるのも、うんちくっぽくなるのも気持ち悪いかなって思ってます。

でも、今回はこういう機会だからこそ良いかなって思ってる。

 

<福田>:でも、僕は普段店頭に立ってるんで、そういうこと知りたい方結構いっぱいいますけどね。

それこそ、僕も今回一緒にこういうことをやらせてもらって、太田さんにもすごくオープンにしてもらって、すごい考えさせられましたもんね。

 

<吉村>:ホントに。だって、例えば今回のこの生地を染めるって言ったって、すごい大変だったんですよ。

 

<福田>:そうですよね。この赤錆びの色。

 

<杉原>:生産背景は、ある種ブランドの価値でもあり、財産でもあるわけです。

それを隠して、守るっていうのが今までの考え方ではあったと思いますが、僕らは貴重な技術や産業が衰退し、つくりたいものがつくれなくなることや、伝えられなくなることが一番の恐怖だと思います。

ストーリー含めて、今まで伝えきれなかった今回のようなことを伝えていきたいですね。

 

<吉村>:AUBETTの目標は、どんどんオープンにしていくってもある。

どうやってつくられてるのかっていうこともだけど、素材、縫製、思想を、最終販売する方まで、情報共有がもっとできるような状況にしたいなって思ってる。

 

<福田>:そうですよね。それができれば、洋服をすごく高濃度のままお客さんに届けることができると思いますし。

 

<吉村>:なんか今その仕組みをつくっていくのを考えてる。

どうしていこうかな〜って。

まあ、いいや。

ドレープとは関係ない。

 

<杉原・福田>:笑笑笑

 

 

 

 

 

 

 

 

<福田>:じゃあ、次にさっきも素材のことで話に出て、今回の生地も織り上げてくれたカネタ織物さんについて教えてください。

AUBETTが思う、カネタさん魅力っていうか、そもそもなんでカネタさんの生地をAUBETTの服として使ってるんですか?

 

<吉村>:カネタさんがホームページにもめちゃめちゃ書いてることでもあるんだけど、カネタ織物の生地の特徴は、「ハリ感と落ち感の共存です」ってこと。強撚糸使うことによって密度が出るから、ハリも出る、けど、強撚糸を使うことによって糸の分量も多くなるから重さも出る。

 

<杉原>:笑笑

カネタさんの会社説明をなんでしてるんですか。笑

福田さん、今回でカネタさんのこと詳しくなってますから。笑

 

<福田>:ははははは。おかげさまで。

 

<吉村>:苦笑。我々が欲しい、素材の条件にすごく合ってるんですよ。

服の中に空間をつくるのに、素材のハリっていうのは、最初のコレクションからとても重要視していて。

カネタさんの素材は、「ハリ」と「ドレープ」という一見相反する要素を技術で共存させるんですよ。

その二つの要素を僕らは欲張りにも一つの素材に求めていて。

 

<杉原>:あと、耐久性ね。

 

<吉村>:そう、耐久性も。

 

<福田>:あ、捨てられないためにも。

 

<杉原>:良い服買っても、耐久性がなければ、何回か着たら最初の形と全然変わって、クタクタになってしまうこととかもあるじゃないですか。

そうなってしまうと悲しくなりますよね。

 

<吉村>:そういう特徴が”空間づくり”っていうことにはすごく合ってると思いますね。

ただ、最初はハリがあり過ぎて苦労したこともあったけど。

それは逆に言えばカネタさんの生地がすご過ぎるっていうか、あんまり一般的ではないっていうことの証でもあるけど。

だから、それがすごくAUBETTの目指す服と、カネタさんの生地が相性が良かったって思ってます。

あとは、やっぱりカネタ織物の太田さん。

太田さんがAUBETTの話をきちんと聞いてくれて、何度もやりとりをして、新しいものを一緒につくっていこうとしてくれる姿勢が本当にありがたいと思っています。

 

<杉原>:本当にそうですね。機屋さんによっては、オリジナル生地を作ることを面倒に思われてしまうこともあるんですが、カネタさんはそんなことはなくて、一緒に挑戦しようとしてくれる。

太田さん、最初から、高くなりますよとか生地値の事を絶対に言わないんですよ。

 

<吉村>:うんうん。そうだね。

 

<福田>:へぇ〜、そうなんですか。

 

<杉原>:この素材やってみたいです。って伝えたら、カネタさんが「うちとしても挑戦してみたいです」って言ってくれる。

 

<吉村>:だから、今回カネタさんでも初めての”モヘア”を打ち込んでくれたしね。

 

<杉原>:確かに。初めてですからね。

 

<吉村>:忘れられないね。この3人で初めてカネタさん行った時に、太田さんが最初は、「モヘアですか〜、、三重織りですか〜、、、」って言ってたこと。

 

<杉原>:強撚三重織りは、カネタさんでしかできないですし、カネタさんでも過去に挑戦しても製品化ができなかった生地ですからね。

しかもそこに初めての素材のモヘア。

 

<吉村>:さすがに、渋い顔してたから。そこにカネタさんの社長(太田さんのお父さん)がツカツカ無言で歩いて来てたった一言、「できる」って。

 

<杉原>:言われましたよね。笑

 

<福田>:僕は全てが初めてのことだったんで、そういうものかと思ったんですが。笑

 

<吉村>:太田さんとしては、実績のないことを簡単にできるって言えなかったと思うけど、それでも挑戦してもらえたっていうことがやっぱり凄い機屋さんだなって思う。

 

<杉原>:あとは、僕らもCASANOVA&COのお客様じゃないとこのような生地には挑戦しようとは思わなかったかもしれないですね。

やっぱり、強撚糸に対するモヘアの撚りであったり、生地のムラとか、均一ではない表情を不良品と考えられる方もいますからね。

細かく生地を見ると不均一な表情じゃないですか。

だから、今回はそれを全てこの生地の良さとして楽しんでもらいたいと思っています。

 

<福田>:そうですね。

この三重織りの生地は、組織感を強調するためにあえてムラを残しているので、よりそれが強く出てる生地のものを手にして頂いた方には、当たり!って思ってもらいたいくらいですからね。

 

<吉村>:工業製品ではある生地なんだけど、でもカネタさんはレピアやシャトルを稼働しながら、できるギリギリのことに常にトライしてる。

 

<杉原>:うん。だから”血”が通ってると思うんですよ。

カネタさんの生地は、すごい魂がこもってると思う。

 

<吉村>:現場見ると、すごく限界ギリギリのことをやってるんだろうなって感じますね。

 

<杉原>:しかも、そのカネタさんのギリギリでつくった生地が、柄や凹凸などの分かりやすい見た目ではなくて、一見するとベーシックに見えてしまうような”無地”の世界で戦っているところがとても惹かれるんですよ。

 

<福田>:そうですね。確かに。確かに。

 

<杉原>:以前に太田さんが僕に言ってたんですけど、10年後、30年後、50年後、100年後に古着屋で自分がつくった生地が発見されて、付加価値がついていて欲しいって思ってるそうなんですよ。

だから、とても特殊な生地ではあるんですけど、そのくらい生地の耐久性もある設定で織ってるんですよ。

 

<福田>:あ〜なるほど。そうなんですね。

 

<杉原>:生地の経年変化もすごくクオリティが高いんですよね。

実際に僕もカネタさんが織った生地のものを何年も着ているんですけど、やっぱり良い変化するんです。

なんかお化粧がとれてきても、原綿が高品質だから光ってたり、撚りが強いから全然それがほぐれてなかったり。

高品質だからとても好きで、派手さはないけど、着ていくと伝わる生地だから、AUBETTにとってはカネタさんの生地はとても重要な存在です。

 

<福田>:なるほど。

 

<杉原>:でも、最初、福田さんに「生地からつくりたい」、「カネタさんに行きたい」って言われた時はビックリしましたけどね。

 

<福田>:ははは。

 

<杉原>:でも、すごい覚悟を感じました。

 

<吉村>:最初に、杉原が「福田さん生地からつくりたいって言ってるけど、大丈夫なのかな。」って言ってきて。笑

 

<福田>:笑。すごいのができましたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<福田>:では、最後に、既にブログでは何度か紹介しているのですが、今回のPrivate (Public) Collectionの洋服、3種類のことを改めて教えてください。

では、FOURTEEN DARTS TAPERED TROUSERSからお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

<杉原>:このパンツも、さっきお話した”イース”がすごく詰まっています。

ピラーティから学んだ”イース”の技術を最大限に発揮させたと思っています。

このパンツってすごく前股上を深くしてるんですよ。

でも、穿いた時にその股上を太もも周りのイースで隠してるんですよ。

 

<福田>:おー、なるほど。

確かに、穿いた時に独特の内側のふともも周りの独特な分量があるっていうのがわかりますね。

 

<杉原>:そうなんです。

このパンツは、平らに置いて開くとワタリが大きくとられたように見えるんですよ。

でも、そうすると動きやすいし、体にもまとわりつかないし。空間ができるんで。

そこで支点の話に戻るんですけど、ファスナーの終わりを支点にしてイースを入れています。

 

<福田>:前開きの開き留まりから、支点にして、、

 

<杉原>:開き留まりを支点して、股上を隠すようにドレープで立体感を出しています。

ただ、これだけの太もも周りの分量を入れようと思うと、タックとかダーツが必要になってくると思うんで、今回は福田さんが”タックじゃない方法”で立体感を表現したいということで14本というたくさんのダーツを駆使してこのパンツが生まれた。

これだけの数のダーツと聞くと、一見強いイメージを連想されますが、今回そこに踏み切れたのは、カネタさんのこの生地の組織がとても複雑でダーツが生地の表面と一体化してくれると感じたからです。

 

<福田>:そうですね。

僕も奇天烈ではない範囲で、タックではないものを入れたかったので、このダーツの方法はピッタリだったんですよ。

 

<杉原>:それで、裾もこの分量を消すために、センタープレスにダーツを隠していたり、内側に隠していたりしているんですよ。

 

<福田>:そういうことですね。

 

<杉原>:ピラーティは、足がとても細く、そこにコンプレックスを持っていたんですよ。

だから、足の細さが強調されないようにこういったドレープを持たせたパンツをよくつくっていたんです。

僕はそれに加えて、お尻が強調されるのが嫌だから、そこも強く意識しています。

 

<福田>:確かに、お尻もAUBETTはすごく特徴ありますよね。

お尻のくり出しを立体裁断で分量を出して、そこからストンと落ちるような設計にしているということですよね?

 

<杉原>:そうです。

パンツは基本的には平面でパターンを引くことが多いですが、パンツもボディを使って立体裁断をしています。

そのボディも自ら改造してオリジナルでつくっています。

 

<福田>:そうか!AUBETTの服は全部が立体裁断ですよね。

 

<杉原>:そうです。カットソーも全部ボディを使ってつくっています。

 

<福田>:カットソーもですか。

カットソーってどうやるんですか。

 

<杉原>:変わらず、ボディに貼り付けてます。

 

<福田>:なるほど。

 

<杉原>:そして、またカネタさんの話に戻るんですけど、FOURTEEN DARTS TAPERED TROUSESのようなこういう膨らみとかドレープを出すのに今回の生地はピッタリな素材なんですよ。

ハリ感とドレープ性が共存した素材です。

僕がラグジュアリーと思える技術が入ったパンツです。

あと、細かいところは福田さんが既に紹介してくれてると思うので。

 

<福田>:そうですね。

このインタビューを掲載する頃には、既に紹介している予定なので、そちらを見てもらえたら良いですね。

でも、やはりドレープと運動量を出すための立体裁断やダーツはすごくよく出来上がったと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<福田>:では、次はAUBETT JACKETについて。

 

<杉原>:これは、小さめの衿に、カット・アウェイ・フロント。

そして、肩を支点にした立体裁断です。

袖や身頃のイースのドレープは、コートと同じなので、そちらでお話をしますが、カット・アウェイ・フロントってピラーティもよく使っていたんですが、日本人の体型にはすごく似合うんですよ。

 

<福田>:そうなんですね。

僕は、このカット・アウェイ・フロントが必ず必要でした。

でも、カット・アウェイ・フロントの服ってウエストシェイプが強くて、海外の洋服でもすごくタイトフィッティングなものがほとんどじゃないですか。

今回は、そうではないものが作りたかった。

 

<杉原>:そうですね。

それは、立体裁断がとても効いています。

これはカット・アウェイ・フロントでなければカバーオールのような見た目になっていると思いますし、それにこの着丈の長さというのは、カット・アウェイ・フロントではとても新鮮ですね。

 

<福田>:そうですよね。

身頃の立体裁断のドレープに着丈が長めというのは、見たことのない形のジャケットになっていると思いますし、それがAUBETTの要素がすごく感じられると思っています。

 

<杉原>:そうですね。

あと、これはとても三重織りの生地との相性が良くて、ジャケットって毛芯を入れたり、胸増しというようなことをして、中に内蔵物を入れるんですよ。

でも、AUBETT JACKETは、三重織りの生地が、まるで毛芯を入れているかのように身頃が立体的に出る。

先にもお話したように、こういう風合いにしたい、こういうハリ感にしたいなど、生地のタッチや表情に拘り抜いて生み出した素材に、毛芯や胸増し芯、ハ刺しなどの手を加えることが、シルエットを出すために生地感を殺していないか?と自問自答の答えがまだ出ておらず、現段階ではどうしても抵抗があり、、、

そういう中で、この三重織りの生地が、それこそ毛芯のような織り目をしているし、とてもよく似てるんですよ。

これを見ると、毛芯なしでそういうジャケットが作れるんだっていうことが分かりました。

だから、これはそういう点を含めると革命的なジャケットになっていると思います。

軽いし、胸の立体感がとてもあるし。

感動的ですね。

 

<福田>:確かに、そうですよね。

これはとても良くできていますよね。

それに、このAUBETT JACKETはトワルを組んでもらった時には、ここまでの立体感はありませんでしたよね。

 

<杉原>:確かに。

 

<福田>:だから、ここまで生地だけで身頃脇のドレープとか、腕のドレープの立体感があるジャケットができてとても感動しました。

 

<杉原>:そういう点ではコートも同じですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<福田>:では、最後にコート。

 

<杉原>:一般的なコートと違って、ものすごい身幅もドレープ性があって、アームも太いんですけど、野暮ったく見えない、あくまで限られた範囲の中でボリュームを出すっていうのを考えています。

大ぶりにせず、ステンカラーコートの枠の中でできるボリュームの出し方をしています。

特に、この袖の形を特に考えましたね。

360度どの角度から見ても”立体物”になっているということ。

 

<福田>うん。うん。そうですね。

 

<杉原>:肘の少し上の膨らみは特にこのコートの特徴で、これにより袖幅が広く見えます。これは、AUBETT JACKETもAUBETTの服もそうなのですが、ピラーティの服から学んだんですよ。

“レッグオブマトンスリーブ”って言うんですけど、そこまで誇張はしていませんが、イメージとしてはそのアームの形状があります。

 

<福田>:レッグオブマトンスリーブですか?

 

<杉原>:そうなんです。

福田さんも皆さんも検索してみたらよく分かると思います。

そこまでではないですが。

 

<福田>:このアームの形状は、アームホールが大きいというわけではないですよね。

 

<杉原>:そうなんです。

アームホールは大きくはないんですけど、袖幅が広いと言ったら分かりやすいでしょうか。

袖幅は、とにかく広いんですが、それだと本来は、外にその分量のドレープが出てしまったり、袖が爆発するようなことになってしまいます。

それを立体裁断の技術で内側に閉じ込めています。

そうすることで、前後に袖が広がるようにしているんですよ。

 

<福田>:ほぉ〜、なるほど。

 

<杉原>:パンツも一緒で、全てドレープで縫い目を隠して、消すことを目指しています。

ハンギングした時に全て縫い目が見えないのが理想です。

 

<福田>:そうなんですね。

 

<杉原>:あと、僕は、美しい服というのは、後身頃にある”抱きのゆとり”と肩周りと袖のドレープが縫い目をまたいで、一続きで曲線で繋がっているのが最高の服だと思っています。

 

<福田>:”抱きのゆとり”ですか。

それって、ここ(後身頃の袖付近)の部分のドレープのことですか?

これを”抱きのゆとり”って言うんですか?

 

<杉原>:そうです。

それを僕は、イースと呼んでるんですけどね。

 

<福田>:えっ、これって僕は、腕を動かすための稼働のゆとりだと思ってました。

 

<杉原>:そうなんですよ。

教科書にはそう書いてあるんですよ。

でも、この部分は体がとても美しく見えるドレープなんです。

だから、僕の服には、ゆとりの概念がないんですよ。

 

<福田>:へぇ〜そうなんですか!

 

<杉原>:この”抱きのゆとり”と同じように前身頃にも身頃から袖に繋がるドレープです。

 

<福田>:これが、さっきから言ってる肩から膨らんで脇に消えるドレープですね。

 

<杉原>:そうなんです。

この前後に入る縫い目をまたいだドレープがとても美しい服だと思っていて、なぜかというと、とても一体感のある”生えた袖”になるんです。

 

<福田>:”生えた袖”!?

 

<杉原>:身頃から生えた一体感のある袖で、生えてるから一体感があると思うんですよ。

人間の体もそうじゃないですか。

部品ではないじゃないですか。手や足や首。

僕は服もそういうことをしたいと思っています。

ただ、パーツとして、衿、身頃、袖をつけた服は、僕の中ではプラモデルのような感覚と同じように感じます。

そうではなくて、服っていうのは、立体物だし、造形物だし、人間の体も毎日体型が変わるんですよ。

食べたり、笑ったりすると。

それに対して、合うのは”生えてる服”だと思うんです。

 

<福田>:うん。うん。ヤバいですね。

 

<杉原>:立体的な服だと服の中に入る体が、日常的に変化しても服だけは、ずっと立体的でいれるので、それが着る理由になると思うんです。

僕も福田さんのブログ読んでいて、とても共感したんですが、服で”人生変わる”と思うんですよ。

 

<福田>:確かに、これ聞いてるとそう思いますね。

僕も今まで洋服ってパーツで分けて考えていて、でも、杉原さんの話を聞くと、洋服って確かに一体化しているものだと思いますし、素晴らしいものですね。

これは、ほんとに、服でこんなことできるんですね。

 

<杉原>:そうですね。

ヨーロッパのメゾンの服は、実はそういうつくりになっているものがあるんですよ。

着るとそのようになっているものがあって。

ただ、エントリープライスで、50万とか60万とかそういう金額の服ってなかなか着ることができないと思うんですよ。

本当によくそれができている服では、何100万もしますけど。

それがすごくできてるんですよ。何でなのかというと、縫製もそれ用にやっているし、アイロンもそのようにやってる。

だから、高い価格の理由があるんですけど、エントリー価格がそのくらいからだとあまりたくさんの人が着れないですし。

 

<福田>:うん。間違いなくそうですね。

 

<杉原>:だから、僕はAUBETTの価格帯で伝えていって、その技術が”洋服の文化”としてちゃんと残るようにしたいと思っているんです。

AUBETTの裏のテーマは。

 

<福田>:なるほど。

 

<杉原>:AUBETTってブランドというよりは、僕の中でのプロジェクトなんです。

こういう技術を浸透させる。そうするとその技術が広まっていけば、廃れないじゃないですか。

 

<福田>:そうですね。

 

<杉原>:その技術が残れば仮に僕が服を作ることができなくなっても残りますし、そうすれば、僕が人生を懸けて見てきた、やってきた好きなことを次の世代に残せるかなと思いますし。

僕は、中学・高校の時までは特に好きなことにも出会えなかったんですよ。

でも、ある一着の服と出会って、変わったんですよ。

その時の服は、そこまで技術があったかは分かりませんが、その服を着て、それがポジティブに心に作用して、そこから何かポジティブなことを考え始めて、じゃあポジティブな場所に行ってみようとか。

そういうポジティブなものって波紋状に広がっていくと思う。

僕がつくった服で、着てくれる方の人生が変えられるかは分かりませんが。

 

<福田>:でも、杉原さんのその考え方の服って多分発明なんじゃないですか!

 

<杉原>:食べ物や飲み物って、とても美味しいものでも食べてしまったら消えてしまうし、アートの素晴らしい作品でも、この絵を見て頑張ろうっていう活力にもなると思う。でも、美しい絵でも出かけてしまったら、会えないわけじゃないですか。

 

<福田>:確かにそうですね。

 

<杉原>:でも、服って着て出かけられるし、24時間一緒にいることができると思うんです。脱いでも眺めていられるし。

そう考えると服ってすごいなと思うんですけど、でも、一番伝わってないじゃないですか。

 

<福田>:伝わってないですね。

 

<杉原>:だから、そこに歯痒さを覚えて、僕はビッグメゾンを飛び出したんですよ。

服の良さってとても素晴らしいし、僕は満足しているけど、伝えないと意味がないなと思って。

この先の未来、洋服の作り方もどんどん便利で簡単になっていってしまうと思うし、そういうものがメインになってくると思う。

でも、今のこういう”洋服の技術”を伝えていき、それを残していくためにAUBETTをやっています。

 

 

————–

 

日本から、シャネルやエルメス、サンローランのように、何世代にも渡りDNAが受け継がれ、歴史とともに進化し続け、日本の技術とともに残り続けるメゾンブランドになれることをAUBETTは目指しています。