ご来店を頂くお客様に頻繁に尋ねられることがあるし、それはきっと当店だけではなくどのようなお店でも聞かれるような言葉だと思います。

 

「コロナの影響ってありますか。」

 

この言葉。

 

僕は、この真意がどこにあるのか、聞かれる方々のそれぞれにあると思うのですが、そのほとんどが単純な興味本位の質問に感じてしまいます。

 

決してそんなこと聞いてくるのはもう辞めて欲しいということではないですし、その言葉に嫌悪感を抱いているということでは全くありません。

 

でも、その質問の多くが”お客さん減ったんですか?”と感じてしまうような聞かれ方が多いのが実情です。

 

そして、実際のところ、当店はコロナの影響は、めちゃめちゃあります。

 

ただ、それはコロナの”影響”であり、ご来店頂けるお客様の数が減ったということではありません。

2年前のパンデミック以来、その”影響”は、良い作用も負の影響もありました。

僕も運営方法について考え、結果的にそれが自分にとってポジティブに作用してくれた。

時には苦しくて悔しくて泣くこともあったし、前からあった頭の10円ハゲの数が増えたりしましたけどね。

でも、取り扱いブランドさんは当店に商品を委ねてくれているし、預かってる責任もあるし、日頃から支持してくださっているお客様のおかげで、このように運営ができています。

 

しかしながら、洋服業界は、縫製工場や機屋さんなどの川上に位置する方々が負の影響をとても受けているのがほとんどというのが現状です。

 

そもそも、当たり前のことですが、アパレル業界は川上、川中、川下と3つの段階に大きく分類することができて、

 

・川上(かわかみ)→原材料に近い、糸屋・機屋・縫製業など

・川中(かわなか)→ブランド・メーカー、代理店など

・川下(かわしも)→小売店

 

大体このような構造になってますね。

 

閉業、廃業、解散など、この2年間で何度も聞き、日本の洋服業界の川上はとても大きな影響を受けている。

そして、それが次の段階の川中に及び、納期遅れや生産不可などのことが起こる。

そして、それが川下の小売店に及ぶ。

 

もはや、このコロナウイルスのパンデミックの時代で、”影響”を受けていない人は誰もいないでしょう。

 

しかしながら、その洋服業界の”影響”でどのようなことが実際にあるのか”山内”を通じて知ってもらえたらと思ってる。

 

当店で取り扱いをしている山内ですが、このブランドは先ほどお話した、川上と川中のどちらもの要素を持ってると思う。

実際に山内さん自身も縫ってるしね。

 

山内さんは、ブランドとして洋服をつくることによって、日本の業界のきちんとした技術が残っていくことを本気で目指してる。

 

だから、山内の洋服一着一着に縫製者さんの名前が記載された”縫製者タグ”が付属します。

縫製業は、昔から日本では盛んにあったものですが、その業界に身を置く人は今では全盛期から比べると激減してる。

それはいろんな理由があるのですが、まずその業界が工賃仕事ということ。

つまりは、縫った着数だけ収入になるってことですね。

しかしながら、以前このブログで少し触れたようにメーカーやブランドは縫製業界が潤沢になるほどの数量をつくることが難しいサイクルに陥ってしまっている。

それは販売を行う小売店の責任でもあると思うし、大雑把な言い方をすると洋服業界の円環が10年も20年も前から破綻してしまっている。

その有り様は、それまでは水面下であったものですが、このコロナウイルスにより露わになってきてしまったと聞きます。

 

それを少しでも何とかして改善していこうという意思も含んで、山内の山内さんは洋服づくりを行ってきた。

それを象徴するのが、昨年の夏。

これ、言っていいのか分かんないけど、ある日突然、山内さんから荷物が届いたんですよ。

中身は、一枚のフリーカット強撚ポンチTシャツ。

しかもその時にはつくられていないはずの白。

 

日頃は必ず付くはずの納品書もない。

 

しかし、同封されていた紙には山内さんの考えていることと、差し上げますというメッセージが書かれていた。

 

どういうことかというと、そのTシャツで小売店を少しでも元気づけて、励ましたいという気持ちと、そのTシャツを縫った工場へ仕事を渡したいということ。

縫製工場は、先ほど言ったように工賃での収入になるため、何かを常に縫っていないと売上が立たないんですよ。

機屋さんでいうと生地を常に織っていないと収入にならない。

山内の縫製を行う方々は、素晴らしい技術を持っているのですが、その当時、コロナウイルスの拡大により生産数が大幅に減ってしまい、縫製の仕事がすごく少なくなってしまっていたそうです。

その間を何とか少しでも埋めようと、山内さんが小野莫大小さんの生地を買い、縫製工場に渡した。

その出来上がったフリーカット強撚ポンチのTシャツは、全部で80枚ほどだったそうですが、山内の洋服を取り扱う小売店のオーナーやバイヤーに無償で配られました。

 

工場に仕事を渡し、出来上がった製品を小売店を励ますために無償で配る。

 

誰もができる”仕事”ではないように思いますね。これ。

 

そして、もう分かっていると思いますが、今日は山内の洋服を紹介します。

 

まあ、山内はこの2021AWシーズンという括りのコレクションはないんですが、今日紹介するのは今シーズンのものではありません。

 

昨年の春夏コレクション、もしくは秋冬コレクションに於いて、ブランドの取り扱い店舗さんがオーダー。

それをオーダー通りの数量、ブランドが製作。

しかし、納品時に受け取りを拒まれた洋服です。

 

どうしても資金繰りが苦しくなることはありますが、それなら前もって分かるはずでしょう。

納品するタイミングになってキャンセル。

 

機屋や縫製者が手をかけ、時間をかけてつくったきちんとした洋服です。

しかしながら、行き場をなくしてしまった洋服。

 

僕は、山内の洋服は、単なる”服”ではなく、”技術者を評価するための投票”という性質も併せ持ってると考えてます。

まあ、山内に限らずですが、特に今の山内の洋服はその側面が強い。

 

だから、その技術の集積した一着の洋服を当店を通じて、日の目を見るべきだと思う。

そして、その洋服を手にして頂いた方にたくさん使ってもらうべきだと思います。

 

だから、その洋服を買い取りました。

 

今日紹介するのは、シャツ2種類です。

 

 

 

 

 

 

 

山内

塩縮加工コットンリネンシャツ(羽衿付き)

face material _ COTTON 50%,LINEN 50%

linning material _ COTTON 55%,CUPRO 45%

color _ GRAY KHAKI

size _ 2,3,4,5

 

山内のクオリティを象徴するシャツ。

塩縮加工が施された表地に総裏地。

袋縫いとパイピングが施されたシャツを凌駕するシャツですね。

衿付きと、

 

 

 

 

 

山内

塩縮加工コットンリネンシャツ(羽衿無し)

face material _ COTTON 50%,LINEN 50%

linning material _ COTTON 55%,CUPRO 45%

color _ GRAY KHAKI

size _ 2,3,4,5

 

独特な形状のノーカラー、衿無しのもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手作業で一着に使用する生地分ずつ、塩縮液に漬け込み加工を施す、山内の塩縮加工。

今の世の中で主流の塩縮加工は、大きな生地の段階でスプレー式に吹き付けて、表面感だけの加工になることばかりだそうですね。

そうなると洗濯や着用で塩縮の風合いが消失してしまうため、一時的な塩縮となります。

だけど、これは手を使い、しっかりと加工を施すの。

それによりもともとあった分量からは大きく縮み、表地だけで通常の要尺でいう2.5着分の使用量となる。

もともとあった生地から大きく大きく縮む分、経糸と緯糸同士の隙間がなくなり、糸同士がひしめき合う結果、ボコボコと皺になるという理論。

そして、手作業での塩縮の賜物として、色合いの深さも挙げられる。

 

天然繊維の中でも、植物繊維に分類されるコットンやリネンは、その性質上、染料により色合いが深く染められないという課題があるそうなんですよ。

対して、同じく天然繊維の中の動物繊維は、タンパク質のアミノ酸が主成分ということもあり、染料との親和性がとても高く、深い色合いにすることが可能なんですよ。

だから、ウール系の生地で深みのある色ってよく見るけど、コットンやリネンで色が深い色ってそんなに多く存在しないんですよ。

染色方法のセオリーでは。

 

ただ、山内の塩縮加工は、生地を縮めるだけでなく、染料の成分が塩縮液に反応し、通常の植物繊維生地では出すことが不可能な色合いにすることができるんですよ。

このGRAY KHAKIも、現在当店で取り扱いをするOLIVEもAZUKIも同じ理屈だから、他のコットンやリネンの生地ではあまり存在しにくい色合いです。

しかもそれが通常の洗濯では色が落ちにくい。

まあ、僕レベルで100回、200回の洗濯が当たり前のクラスになってくると、洗濯による自然なフェードも楽しめるようになりますけどね。

 

 

 

 

 

 

先日のブログでもお伝えしましたが、このシャツは表にほとんどステッチが露出しません。

生地の風合いが強いため、洋服の全体の見た目が強くなり過ぎないようにバランスを考えられてますね。

衿や身頃の接ぎ、

 

 

 

 

 

 

肩線やバックヨークも全て袋縫い、もしくは見えない中で接ぎ合わされています。

 

 

 

 

 

ボコボコとした奥行きのある生地の見た目。

と細かい細かい綾織りの目。

 

 

 

 

表からステッチが見えるのは、ボタンホールとカフス、

 

 

 

 

これね。

 

 

 

 

 

あとは、身頃の裾のみです。

 

 

 

 

 

しかしながら、裏はシャツとしては大変に変態な縫製仕様。

 

 

 

 

コットン55%、キュプラ45%のツイルの裏地と共に処理をされる肩やアーム。

 

 

 

 

これね。

もはやシャツの裏で、しかも丸みが強いアームホールとは思えない処理のオンパレード。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二枚袖の処理から剣ボロの開き留まりまで続くパイピング。

その押さえのコバステッチも全く歪みなく縫われる。

こんなことシャツ縫ってる人が誰でもできるレベルではないですよ。

すんごい縫製技術です。

そして、こうして丁寧にパイピングが施されることによって肌への当たりがソフトになるし、結果的に洋服の耐久性も大幅に向上します。

 

 

 

 

 

 

前身頃ウラのコバステッチ。

とても整ってる。

 

 

 

 

 

肌当たりの良いコットンキュプラのツイル裏地。

身頃脇の縫製もこの運針。

細かい生地の組織と比べるとそのピッチがよく分かる。

 

 

 

 

 

サイジングは決してルーズな設定ではないですが、立体的に体にフィットしてくれるシャツですね。

この立体感は驚き。

大きいサイズじゃないのに窮屈に感じない設計。

 

 

 

 

 

で、これは僕がたまたま今日着てる3年か4年前の塩縮加工コットンリネンシャツ。

朝なにも考えずに手に取ったらこれでした。

 

これはコレクションにあったものじゃなくて、初めて別注みたいな感じでつくった限りなく白に近いサックスブルー。

あと家に3着くらいあるかな。

このシリーズ。あまりにも心地良過ぎて。

もう、少なくとも300回は洗濯してると思うわ。この色は。ほんとに。全然盛ってない。

もうここまで洗うと、もともと淡いトーンだったのが塩縮加工前みたいな感じで薄い色になってますね。

 

 

 

 

表の生地はマシュマロのように柔らかくなり、かなり膨らみが出てる。

通称、着れるマシュマロ。

でも、消えない塩縮の皺。

山内のブランドネームは取れてる。

まあ、これくらい使ってもらうのがこういう洋服は一番似合いますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

山内

ハイブリッドコットンシャツ(羽衿付き)

material _ COTTON 100%

color _ KHAKI

size _ 2,3,4

 

 

 

 

山内

ハイブリッドコットンシャツ(スタンド)

material _ COTTON 100%

color _ KHAKI

size _ 2,3,4

 

そして、これも。

名前の通りコットンであるのにも関わらず、そうとは思えない生地の見た目、タッチをしているシャツ。

 

 

 

 

 

細い糸(80番手の単糸)でありながら、それを超々高密度に織り上げた生地ですね。

これは、静岡県の浜松にある機屋さんで、福田織物さんの生地。

 

ここまで高密度に織ることができるのは、ヨーロッパの最先端の織機じゃないと難しいそうですよ。

しかもその織機を導入するのはかなりハードルが高いみたい。

だから、日本でも福田織物さんくらいじゃないと実現できないレベルって山内さん言ってました。

 

超々高密度ってだけあって、通常の綿織物の染色方法だと染料が中に入っていかないから染められないそうです。

ということでコットンには普段は行わない、高温高圧プレスのウルトラパワーで色をねじ込んでるみたい。

それくらい超特殊生地。

 

で、これはマイクロスコープしようと思ったんですが、今日は事情があってできなかったから、顔面を擦り付けて生地見てみて。

 

 

 

 

 

生地を触るとまあ、これコットン100だって思える人はなかなかいないでしょうね。

ナイロン100のような表面感と若干カシミヤが潜んでる。カシミヤ入ってないけど。

山内以外では未体験ゾーンの生地ですね。

 

 

 

 

そして、このシャツは先ほどの塩縮加工のシャツとは違い、表にステッチが多く露出しているシャツ仕様ですね。

表でふんだんに山内の縫製テクニックを感じてもらえると思いますよ。

 

 

 

 

 

前立て。

 

 

 

前立ては特殊な比翼仕様ですね。

前立ての幅自体がそもそもシャツセオリーよりも数ミリ狭く、その上にバチバチのコバステッチ。

で、カンドメで前立ての余計な開きを抑える合理的処理。

控えめな見た目だけど、しっかりとテクニックが詰まってる。

 

 

 

 

 

前身頃と後身頃の裾はちょっと変わった形状で、カッティングがそれぞれ異なる仕様ですね。

裾は三つ巻き。

 

 

 

 

本黒蝶貝のボタンが備わるけど、わざわざそれを隠しちゃう比翼の前立て。

 

 

 

 

角が落とされた、ラウンド型のカフス。

 

 

 

 

 

もちろん二枚袖。

シームの部分にパッカリングのようなシワが走ってるけど、これは生地が生地だし、縫製のピッチもピッチだからそういうものです。

反対にシワを気にせず着れるから良いかもしれませんね。

生地が保つギリギリのとてつもなく細かい運針ですが、縫って針が通る度に生地からプスプスと音がするのが想像できる生地ですよ。

 

カラーは、KHAKIでストレートにミリタリーカラーだけど、圧倒的な肌当たりの生地の質感と、バツグンの縫製ピッチでかなり独特な空気が漂ってるからそれを楽しんで。

 

あと、写真には撮ってないけど、山内さんがギャラリーショップ用にブラックも在庫してたので、それもある分を全部一緒に送ってもらいました。

まあ、ブラックに関してはかなりサイズの偏りはあるけど。

 

当店では、山内の洋服は、洋服屋として必ず必要なものであるし、お客様には山内のつくるものを着ると絶対的に心に作用してくるものがあると思ってる。

 

ストレートな言葉だけど、着るだけではない、洋服の奥行きを感じてもらえると取り扱いをしていて、いつも思います。

 

山内のシャツ、見てみてください。